絹糸の特徴として、水分を含むと弾力性が高くなり、糸が伸びやすくなります。

皆さん絹のことをどのくらいご存知でしょうか?一般に皆さんに知られている「絹」とは、精練された練り絹のことであると思います。では、精練される前の絹糸(生糸:きいと)とはどのようものなのか、また精練とはどのようなことを言うのでしょうか?
絹糸は蚕(かいこ)が作る繭糸(まゆいと)を何本か合わせて一定の太さ(単位はデニール※)にしたものです。 この繭糸は2本のフィブロイン繊維(約75%)と膠質(こうしつ)のセリシン(約25%)で構成されていて、 精練とは2本のフィブロインを覆うセリシンを取り除くことをいいます。
絹糸の特徴として、水分を含むと弾力性が高くなり、糸が伸びやすくなります。緯糸(ぬきいと:横糸のこと)に強撚糸(きょうねんし:強い撚りをかけた糸)を用いるちりめんをつくる過程で、この絹糸の特徴が重要な役割を果たします。
※生糸の太さはデニール(d)であらわす。1dは9000メートルの糸の重さが1グラムの状態の重さ、9000メートルを固定して重さが2グラムなら2d、21グラムなら21dと考えれば
わかりやすいでしょう 。
(例)9000mあたり2g=2d、9000mあたり21g=21d)
繭糸は蚕品種や飼育の時期によって太さに違いができたり、1つの繭でも内側と外側でその太さは1.5d〜3.5dとばらつきがある。平均は2.3d〜3d程度であるが、これでは細くて取り扱いが難しいので、繭を7〜10粒(個)集めて21〜30dの絹糸(生糸)を作る。
Q:ちりめんは重いほうがいい生地?
A:確かに同じ条件で織ったちりめんであれば、使用原料である絹糸の使用量が多いほうが高価な生地になるでしょう。しかし、たとえば規格寸法自体(幅、長さ)が違う場合などは、重さだけでは比べられません。
 そして一番大切なことは、織物にはちょうど良いヨコ糸とタテ糸の密度があり、そのバランスが崩れると、いい生地とはいえないのです。たとえば、特にヨコ糸密度が濃いすぎると十分な空間が確保されずに、思うようなシボ立ちが得られなかったり、ちりめん独特の柔らかさが失われてしまったりします。
 ちりめんは良い原料を使用することはもちろん、ヨコ糸とタテ糸の太さ、撚りの強さ、糸密度、糸張力など、全てがバランスよく設計されてはじめて、よい生地になるのです。たとえば、重めの生地を作るためには太い糸を使用し、それにあわせた糸密度を設計しなければなりませんし、軽めの生地を作る場合も同じことです。それを、単に重めの生地をつくる為によこ糸密度のみ密にしてしまったりすると、バランスが崩れて生地が硬くなり、オレやシワの原因になったりするのです。
Q:御召し生地ってどんなもの?
A:御召しとは、一般に御召し緯(おめしぬき)を使用した先染めの織物、またはたて糸よこ糸すべて先練りの織物のことを言うようです。つまり、ちりめんのように、生地を織り上げてから精練する後練りではなく、糸の段階で精練し(先染め織物は糸を精練したものを更に染色して)織り上げたものを言います。
 御召し緯(おめしぬき)とは先練り織物、先染め織物に使う強撚糸で、簡単に言うと、ちりめんの場合は強撚糸の撚りをセリシンで止めていたものをお召し緯は、精練した糸にでんぷんを主体としたお召糊を含ませ、そのお召糊によって撚りをとめているのです。
Q:三眠蚕の糸はどんなもの?
A:蚕は卵からふ化してしてから熟蚕になるまでに数回脱皮します。この幼虫脱皮の回数は眠性と呼ばれています。脱皮の回数は4回のものが普通ですが、品種により3回のものもあり、これを三眠蚕と呼んでいます。 一般的な4齢の繭の繊度は2.8〜3.1デニール程ありますが、三眠蚕は三眠で繭を作るため、蚕はもちろん繭自体も小さく、したがってそれから採れる糸の繊度も1.8〜2デニールと細いものになります。
 通常21デニールの生糸は、普通繭では7粒ほどの繭を併せて作るのに対して、三眠蚕では10〜11粒必要とします。細い糸を沢山使って生糸にするので、繊度ムラも節も少なく、しなやかで染めつきの良い織物になります。